電験一種 H24年 理論 問4
次の文章は,nチャネルの MOS トランジスタに関する記述である。文中の(0)に当てはまる最も近いものを解答群の中から選びなさい。なお, \(\text{SiO}_{2}\) の誘電率 \(3.4\times 10^{-13}\) \(\left[\text{F}\cdot \text{cm}^{-1}\right]\)、単位電荷 \(1.6\times 10^{-19}\) \([\text{C}]\)、シリコンでの電子移動度 \(1.0\times 10^{3}\) \([\text{cm}^{2}\cdot \text{V}^{-1}\cdot \text{s}^{-1}]\) を計算に用いること。
MOS トランジスタでは、ゲート電圧 \(V_{G}\) をしきい値電圧 \(V_{T}\) より大きくするとチャネルが反転状態になる。ゲート電圧としきい値電圧間の電位差 \(\left(V_{G}-V_{T}\right)\) をオーバードライブ電圧と呼ぶ。電子の熱分布を無視すれば、MOS 構造を \(\text{SiO}_{2}\) を絶縁物とした平行平板コンデンサとして考えることができる。このとき、反転状態にある単位面積当たりの電子の面電荷密度は、面積当たりの容量とオーバードライブ電圧との積となる。\(\text{SiO}_{2}\) の膜厚が \(1.0\times 10^{-6}\) \([\text{cm}]\) であるとした場合、反転層にある電子の面電荷密度を \(-5.0\times 10^{-7}\) \([\text{C}\cdot \text{cm}^{-2}]\) とするために必要なオーバードライブ電圧は (1) \([\text{V}]\) である。この面電荷密度は電子のキャリア濃度にすると (2) \([\text{cm}^{-2}]\) である。
いまドレーン-ソース間の電圧が小さいときチャネル内の電子がドレーンへ向かうための電界の大きさは一様と考えてよいとする。チャネルの長さが \(5.0\times 10^{-4}\) \([\text{cm}]\)、ドレーン-ソース間電圧が \(0.10\) \([\text{V}]\) であるとすれば、チャネル内の電子がドレーンへ向かうための電界の大きさは (3) \([\text{V}\cdot \text{cm}^{-1}]\) である。ここで、電子の速度は、電子移動度と電界の積となることから、電子の速度は (4) \([\text{cm}\cdot \text{s}^{-1}]\) となる。
電流密度は、流れる電荷密度と速度の積で表されることから、オーバードライブ電圧が (1) \([\text{V}]\) で、ドレーン-ソース間電圧が \(0.10\) \([\text{V}]\) のときに MOS トランジスタに流れる単位幅当たりの電流密度は (5) \([\text{A}\cdot \text{cm}^{-1}]\) となる。
| (イ) | \(-3.1\times 10^{12}\) | (ロ) | \(-1.5\times 10^{0}\) | (ハ) | \(3.1\times 10^{-7}\) | (ニ) | \(1.0\times 10^{-4}\) |
| (ホ) | \(2.0\times 10^{-2}\) | (ヘ)(5) | \(1.0\times 10^{-1}\) | (ト)(1) | \(1.5\times 10^{0}\) | (チ) | \(2.0\times 10^{0}\) |
| (リ) | \(5.0\times 10^{0}\) | (ヌ) | \(2.0\times 10^{1}\) | (ル)(3) | \(2.0\times 10^{2}\) | (ヲ) | \(1.0\times 10^{4}\) |
| (ワ)(4) | \(2.0\times 10^{5}\) | (カ) | \(2.0\times 10^{6}\) | (ヨ)(2) | \(3.1\times 10^{12}\) |
出典:平成24年度第一種電気主任技術者理論科目A問題問4
解説
この手の問題は単位を意識するだけで何問かとれるようになっていることが多いです。
反転層にある電子の面電荷密度を \(-5.0\times 10^{-7}\) \([\text{C}\cdot \text{cm}^{-2}]\) とするために必要なオーバードライブ電圧
問題文にあるMOS構造を\(\text{SiO}_{2}\)を絶縁物とした平行平板コンデンサとして考えた時のコンデンサの単位面積あたりの容量\(C\)は、\(\mathrm {SiO_{2}}\)の誘電率\(3.4\times 10^{-13} \ \mathrm {[F\cdot {cm}^{-1}]}\)と膜厚\(1.0\times 10^{-6} \ \mathrm {[cm]}\)を用いて
\begin{aligned} C &= \frac {3.4\times 10^{-13} }{1.0\times 10^{-6}} \\ &= 3.4\times 10^{-7} \\ \end{aligned}
となります。これの単位は\(\mathrm{[F \cdot cm^{-2}]}\)です。
問題文にあるように、単位面積当たりの電子の面電荷密度は面積あたりの容量とオーバードライブ電圧との積なので、オーバードライブ電圧\(V_G-V_T\)は単位面積当たりの電子の面電荷密度を面積あたりの容量で除せば求められます。
\begin{aligned} V_G-V_T &= \dfrac{5.0\times 10^{-7}}{3.4\times 10^{-7}} \\ &\fallingdotseq 1.470588\\ \end{aligned}
よって答えは(ト)の\(1.5\times 10^{0}\)です。(電子には負号がついていますが電圧が負である必要はありません)
面電荷密度を電子のキャリア濃度にする
このキャリア濃度は電子の面電荷密度を単位電荷で除すことで求められます。問題に\(\mathrm{[cm^{-2}]}\)とあることがヒントになるかと思います。( \([\text{C}\cdot \text{cm}^{-2}]\)を\([\text{C}]\)で割ると\([\text{cm}^{-2}]\) となる)
\begin{aligned} \dfrac{5.0\times 10^{-7}}{1.6\times 10^{-19}} &= 3.125 \times 10^{12} \\ \end{aligned}
よって答えは(ヨ)の\(3.1\times 10^{12}\)です。
チャネル内の電子がドレーンへ向かうための電界の大きさ
問題でドレーン-ソース間の電圧とチャネルの長さが与えられており、ここの電界の大きさは一様と考えてよいとなっているため、電界は
\begin{aligned} \dfrac{0.10}{5.0\times 10^{-4}} &= 2.0 \times 10^{2} \\ \end{aligned}
と求められます。答えは(ル)の\(2.0\times 10^{2}\)です。
電子の速度
問題にある通り電子移動度と電界の積を求めます。
\begin{aligned} 1.0\times 10^{3} \times 2.0 \times 10^{2} &= 2.0 \times 10^{5} \\ \end{aligned}
よって答えは(ワ)の\(2.0\times 10^{5}\)です。
MOSトランジスタに流れる単位幅当たりの電流密度
問題にある通り流れる電荷密度と速度の積を求めます。
\begin{aligned} 5.0\times 10^{-7} \times 2.0 \times 10^{5} &= 1.0 \times 10^{-1} \\ \end{aligned}
よって答えは(ヘ)の\(1.0\times 10^{-1}\)です。