電験一種 R8年 法規 問5
次の文章は,送電線や変圧器などの電力設備の過負荷に関する記述である。文中のに当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
a) 過負荷とは,連続して流すことができる (1) を超える電流が流れる状態をいう。過負荷した状態が継続すると設備の (2) などにいたるおそれがある。このため,送電線,変圧器などのそれぞれの設備ごとに平常時に連続して運用可能な常時容量と,設備故障時などにおける,時間を設定して運用可能な過負荷容量を決めて運用されている。実際に電力設備が過負荷となったとしても,一定時間までは,機器を (2) することなく連続運転が可能である。この一時的な過負荷状態の限度は通常, (3) な限界から決められ,過負荷許容限度という。架空送電線の過負荷許容限度は周囲温度や (4) などの使用条件を定めることによって,過負荷率に応じた過負荷許容時間として定めることができる。変圧器の過負荷許容限度は巻線温度,油温,残存寿命,電流値に影響される。
b) 架空送電線を過負荷運用すると温度上昇によって電線が焼きなましされることにより電線の (5) 強度が低下し,使用できなくなるおそれがある。温度上昇に伴って電線が伸びて (6) が大きくなることにより,公衆保安上必要とする最低地上高の確保が困難となり,公衆災害が発生するおそれがある。また,線下の絶縁距離が確保できなくなり,地絡などの事故にいたるおそれがある。
c) 変圧器の絶縁物は温度・ (7) ・酸素の影響を受け劣化するため,変圧器を過負荷運用すると,巻線及び絶縁油の温度が上昇し,変圧器の寿命が短くなる。巻線の温度が過度に上昇すると,絶縁紙に含まれる (7) が気化しようとして絶縁油中に気泡を生じ,絶縁性能が低下するおそれがある。絶縁油の温度上昇によって機器タンク内圧が上昇し,ブッシング油密部,コンサベータ及び (8) 装置などからの漏油にもつながる。また,絶縁油中に存在する樹脂製の部品(絶縁筒など)は (9) 的強度が低下する。さらに通電電流の増加に伴ってタンクへの漏れ磁束が増加することにより,振動・騒音が大きくなる。
解答群
| (イ) |
結合 |
(ロ) |
スラッジ |
(ハ)(4) |
風速 |
| (ニ)(2) |
損傷 |
(ホ)(8) |
放圧 |
(ヘ)(9) |
機械 |
| (ト)(3) |
熱的 |
(チ)(5) |
引張 |
(リ)(7) |
水分 |
| (ヌ) |
圧縮 |
(ル)(6) |
弛度 |
(ヲ) |
気圧 |
| (ワ) |
限界電流 |
(カ) |
物質的 |
(ヨ) |
取替 |
| (タ)(1) |
定格電流 |
(レ) |
抵抗 |
(ソ) |
電気 |
出典:令和8年度 第一種電気主任技術者 一次試験 法規科目 問5
解説
穴埋め箇所に比べ解答群が少ないので比較的容易に解ける問題かと思います。
過負荷の定義となる基準電流
正解 (タ)
設備が連続して安全に流せる電流の上限は定格電流と呼ばれます。これは設備の熱的な設計値に基づいて定められており、これを超える電流が流れた状態が過負荷です。
答えは(タ)の定格電流です。
過負荷状態の継続により生じる設備の影響
正解 (ニ)
過負荷状態が続くと、電流によるジュール熱で設備の温度が上昇し、絶縁物の劣化や機械的強度の低下などを通じて設備の損傷に至るおそれがあります。
答えは(ニ)の損傷です。
一時的な過負荷許容限度を決定する要因
正解 (ト)
一時的な過負荷であれば即座に損傷するわけではなく、一定時間は連続運転が可能です。この許容限度は、主に温度上昇による絶縁物や導体への影響、すなわち熱的な限界から決められます。
答えは(ト)の熱的です。
架空送電線の過負荷許容時間を定める使用条件
正解 (ハ)
架空送電線は、電流による発熱と周囲環境への放熱のバランスで温度が決まります。放熱に大きく影響する要素として、周囲温度のほかに風速があり、これらの条件を仮定することで許容電流・許容時間が計算されます。
答えは(ハ)の風速です。
焼きなましにより低下する架空送電線の強度
正解 (チ)
焼きなましは金属を加熱した後に冷却することです。これにより金属が柔らかくなるので加工がしやすくなります。硬銅線やアルミ線などの電線は、高温にさらされると意図せずこれが起こり、電線の引張強度が低下します。強度が下がると断線などのリスクが高まります。
答えは(チ)の引張です。
電線の伸びに伴って増大する量
正解 (ル)
温度上昇によって電線は熱膨張で伸びます。電線が伸びると弛度が大きくなり、電線と地表・地物との離隔距離が減少します。これが感電・接触事故などにつながります。
答えは(ル)の弛度です。
変圧器絶縁物の劣化および気泡発生に関わる要因
正解 (リ)
変圧器の絶縁物は「温度」「水分」「酸素」の3要素によって劣化が進行することが知られています。巻線温度が過度に上昇すると、絶縁紙に含まれる「水分」が気化しようとして油中に気泡を発生させ、絶縁性能を低下させます。
答えは(リ)の水分です。
漏油につながるおそれのある変圧器の保護装置
正解 (ホ)
絶縁油の温度上昇によりタンク内圧が上昇すると、ブッシングの油密部やコンサベータに加え、内圧異常上昇時に圧力を逃がすための放圧装置からも油が漏れるおそれがあります。
答えは(ホ)の放圧です。
油温上昇時に低下する樹脂製部品の強度
正解 (ヘ)
絶縁油中に浸漬されている樹脂製部品絶縁筒などは、温度上昇により経年劣化が進み、機械的強度が低下します。
答えは(ヘ)の機械です。
(1)
タ
定格電流
(2)
ニ
損傷
(3)
ト
熱的
(4)
ハ
風速
(5)
チ
引張
(6)
ル
弛度
(7)
リ
水分
(8)
ホ
放圧
(9)
ヘ
機械