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電験一種 R5年 電力・管理 問5

図1の抵抗RとリアクタンスXで表される送電線の特性について電力円線図を用いて考える。なお、本問において単位のない諸量は単位法で表されており、受電端電圧Er˙の位相を零、送電端電圧Es˙の位相をδ [rad] (0δπα)とする。次の問に答えよ。

(1) 送電端円線図の式を次の手順で求めよ。

a) 送電端から流れ出す電流Is˙Es˙Er˙Z˙を用いて表せ。

b) 送電端から流れ出す有効電力Ps、無効電力QsEsErZαδを用いて表せ。

c) 送電端円線図の式を(Psx1)2+(Qsx2)2=x32と表したとき、送電端円線図の中心(x1,x2)、半径x3EsErZαを用いて表せ。なお、sin2(δ+α)+cos2(δ+α)=1を用いてもよい。

(2) 答案用紙に印刷されている図2に受電端円線図を描き、有効電力損失、無効電力損失を図中で示せ。なお、受電端円線図は、Es=Erとして、二つの円の中心と原点の位置関係、二つの円の交差に留意して描くこと。

(3) 図1の送電線1相当たりの抵抗が5Ω、リアクタンスが20Ω、送電端電圧と受電端電圧が500kVの場合、単位法の基準容量を1000MV・A、基準電圧を500kVとして、送電端円線図の中心と半径を単位法で求めよ。

出典:令和5年度第一種電気主任技術者電力・管理科目問5

解説

電力円線図は一種の古い過去問か二種にあるような状況だったので、一種の最近の過去問しかやっていなければ初見の問題になったかもしれません。

この年は他の問題が比較的簡単だったので、計算重視でも捨てる選択肢をとった方もいるんじゃないかと思います。

標準解答と補足

(1)

a)

送電端から流れ出す電流Is˙は、

Is˙=Es˙Er˙Z˙

...(答)

b)

送電端から流れ出すPsQsEs˙Is˙を用いて、

Ps+jQs=Es˙Is˙¯=Es˙Es˙¯Er˙¯Z˙¯=Es2EsErejδZejα=Es2ZejαEsErZej(δ+α)=Es2ZcosαEsErZcos(δ+α)+j(Es2ZsinαEsErZsin(δ+α))

Ps=Es2ZcosαEsErZcos(δ+α)

...(答)

Qs=Es2ZsinαEsErZsin(δ+α)

...(答)

c)

③、④式より

(PsEs2Zcosα)2+(QsEs2Zsinα)2=(EsErZ)2

x1=Es2Zcosαx2=Es2Zsinαx3=EsErZ

...(答)

補足

中心が(h,k)、半径がrの円の方程式

(xh)2+(yk)2=r2

⑤の導出

PsEs2Zcosα=EsErZcos(δ+α)QsEs2Zsinα=EsErZsin(δ+α)(PsEs2Zcosα)2+(QsEs2Zsinα)2=(EsErZcos(δ+α))2+(EsErZsin(δ+α))2(PsEs2Zcosα)2+(QsEs2Zsinα)2=(EsErZ)2{sin2(δ+α)+cos2(δ+α)}(PsEs2Zcosα)2+(QsEs2Zsinα)2=(EsErZ)2

(2) 受電端に流れ込む有効電力Pr、無効電力Qrとして、受電端円線図の式を送電端円線図の式と同様に求めると以下となる。

(Pr+Er2Zcosα)2+(Qr+Er2Zsinα)2=(EsErZ)2

補足

受電端電力の導出

Pr+jQr=Er˙Is˙¯=ErejδEsErejδZejα=EsErZej(αδ)Er2Zejα=EsErZ{cos(αδ)+jsin(αδ)}Er2Z(cosα+jsinα)Pr=EsErZcos(αδ)Er2ZcosαQr=EsErZsin(αδ)Er2Zsinα(EsErZ)2=(Pr+Er2Zcosα)2+(Qr+Er2Zsinα)2

なお、Prにおいてα=π2(=線路の抵抗分を無視する)とすると、Pr=EsErXsinδがでてきます。

線路での有効電力の消費をPsPrR|I˙s|2でそれぞれ示します。

PsPr={Es2ZcosαEsErZcos(δ+α)}{EsErZcos(αδ)Er2Zcosα}=1Z[Es2cosαEsErcos(δ+α)EsErcos(αδ)+Er2cosα]=1Z[Es2cosαEsErcosδcosα+EsErsinδsinαEsErcosαcosδEsErsinαsinδ+Er2cosα]=1Z[Es2cosαEsErcosδcosαEsErcosαcosδ+Er2cosα]=Es22EsErcosδ+Er2ZcosαPloss=Zcosα|I˙s|2(Zcosα=R)=Zcosα|(EsErcosδ)+jErsinδZ(cosα+jsinα)|2=ZcosαEs22EsErcosδ+Er2Z2=Es22EsErcosδ+Er2Zcosα

当然といえば当然ですが、送電端電力と受電端電力の有効電力の差は線路の抵抗により消費された電力と一致します。

同じことが無効電力についてもいえます。

これが電力円線図で示されている有効電力損失と無効電力損失の大きさです。

電力円線図の書き方について

題意より、Es=Erなので、送電端電力、受電端電力は

Ps=Es2ZcosαEs2Zcos(δ+α)Qs=Es2ZsinαEs2Zsin(δ+α)Pr=Es2Zcos(αδ)Es2ZcosαQr=Es2Zsin(αδ)Es2Zsinα

となります。ここでδ=0とすると、いずれの式も結果が0となることが分かります。

よって、δ=0の時原点を通らないといけません。

円の中心は送電端が(Es2Zcosα,Es2Zsinα)に対して受電端が(Es2Zcosα,Es2Zsinα)で、半径はどちらもEs2Zなのでδ=0の時原点対称となることが分かります。

送電端から見ると受電端はδ遅れていて、逆に受電端から送電端はδ進んでいるので電力円線図におけるδの位置関係は逆になります。

これらをまとめると解答の図となります。

(3)

基準インピーダンスZNは、基準電圧VN、基準容量SNとして、

ZN=VN2SN=250Ωより、

R=0.02p.u., X=0.08p.u.

Z=R2+X2=0.082462

cosα=RZ=0.24254, sinα=XZ=0.97014

Es=Er=1.0及び⑦、⑧及び⑨式を⑥式に代入して、

送電端円線図の半径は12.1、中心は(2.94, 11.8) ・・・(答)