次の文章は,同期発電機(大容量タービン発電機)の可能出力曲線に関する記述である。文中のに当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
図1は同期発電機の端子電圧を一定としたときの運転限界を示したものである。曲線 ac は中心が点 d,半径が線分 ad により表される円の一部であり, (1) により定まる運転限界を表している。曲線 ac 上において同期発電機が図2の円筒機等価回路で表される場合,線分 ad の長さは (2) となる。ここで, \(E_f\) は内部誘導起電力, \(\delta\) は内部相差角, \(V_n\) は端子電圧, \(X_d\) は同期リアクタンスとする。
一方,曲線 be は同期発電機の (3) などにより定まる運転限界である。この運転限界の超過は短時間でも許容できない場合があるため,AVR による端子電圧一定運転中に系統側で (4) 負荷が急増した場合などに備えて, (5) 機能が用いられている。
解答群
| (イ)(5) |
不足励磁制限 (UEL) |
(ロ) |
過渡安定性 |
(ハ) |
\(\displaystyle \frac{E_{\text{f}}^2}{X_{\text{d}}}\) |
| (ニ)(1) |
界磁巻線温度 |
(ホ) |
誘導性 |
(ヘ) |
電機子反作用 |
| (ト) |
界磁喪失リレー |
(チ) |
過励磁制限 (OEL) |
(リ) |
電機子巻線温度 |
| (ヌ)(3) |
固定子コイル端の温度上昇 |
(ル) |
運転電圧上昇 |
(ヲ)(4) |
容量性 |
| (ワ) |
\(\displaystyle \frac{V_{\text{n}}^2}{X_{\text{d}}}\) |
(カ)(2) |
\(\displaystyle \frac{E_{\text{f}}V_{\text{n}}}{X_{\text{d}}}\) |
(ヨ) |
抵抗 |
出典:令和8年度 第一種電気主任技術者 一次試験 電力科目 問3
解説
可能出力曲線は二次試験でも問われる内容です。空の状態から書けるようにしておくといいです。
曲線acが表す運転限界の決定要因
正解 (ニ)
曲線acは遅相側の運転限界です。端子電圧一定のまま遅れ無効電力を増やすには界磁電流を増やす必要がありますが、界磁電流が定格値に達するとそれ以上増やせません。曲線 ac 上は界磁電流(すなわち \(E_f\))が上限値で一定となる点の集まりであり、界磁巻線温度で運転限界が決まります。
答えは(ニ)の界磁巻線温度です。
円筒機等価回路における線分adの長さ(半径)
正解 (カ)
図2の円筒機等価回路から導きます。
端子電圧を基準 \(V_n\angle 0\)、内部誘導起電力を \(E_f\angle\delta\) とすると、端子から出る複素電力は
$$\begin{aligned}
P+jQ &= V_n\,\overline{\dot I} \\
\end{aligned}$$
です。また、電流\(\dot I\)は
$$\begin{aligned}
\dot I &=\frac{E_f\angle\delta - V_n}{jX_d} \\
&= \frac{E_f (\cos \delta + j \sin \delta) - V_n}{jX_d} \\
&= \frac{-j \left\{ E_f \cos \delta - V_n + j E_f \sin \delta \right\}}{X_d} \\
&= \frac{E_f \sin \delta - j(E_f \cos \delta - V_n)}{X_d} \\
&= \frac{E_f \sin \delta}{X_d} - j \frac{E_f \cos \delta - V_n}{X_d} \\
\end{aligned}$$
です。これより\( P+jQ\)を求めます。
$$\begin{aligned}
P + jQ &= V_n\,\overline{\dot I} \\
&=V_n \left( \frac{E_f \sin \delta}{X_d} + j \frac{E_f \cos \delta - V_n}{X_d} \right) \\
&= \frac{E_f V_n }{X_d} \sin \delta + j \frac{E_f V_n \cos \delta - V_n^2}{X_d} \\
\end{aligned}$$
実部と虚部をそれぞれ比較することにより、\(P\) と \(Q\) が求まります。
$$\begin{aligned}
P &= \frac{ E_f V_n}{X_d} \sin \delta \\
Q &= \frac{E_fV_n}{X_d}\cos\delta-\frac{V_n^{2}}{X_d} \\
\end{aligned}$$
\(\dfrac{V_n^{2}}{X_d}\)を移行して、二乗したものを足し合わせます。
$$\begin{aligned}
P^2 + \left( Q + \frac{V_n^2}{X_d} \right)^2 &= \left( \frac{ E_f V_n}{X_d} \sin \delta \right)^2 + \left( \frac{E_f V_n }{X_d} \cos \delta \right)^2 \\
&= \left( \frac{E_f V_n }{X_d} \right)^2 (\sin^2 \delta + \cos^2 \delta) \\
&= \left( \frac{E_f V_n }{X_d} \right)^2 \\
\end{aligned}$$
これは、\(P\)-\(Q\) 座標平面において、中心(点d) \(\left(0, -\dfrac{V_n^2}{X_d}\right)\)、半径 \(\dfrac{E_f V_n }{X_d}\) の円(電力円線図)を表します。
\(E_f\) 一定の曲線 ac 上では、この半径が線分 ad の長さです。
答えは(カ)の\(\displaystyle \frac{E_{\text{f}}V_{\text{n}}}{X_{\text{d}}}\)です。
進相運転側(曲線be)の運転限界を定める現象
正解 (ヌ)
曲線 be は進み力率側の限界です。この領域では界磁電流が小さく、固定子コイル端部で漏れ磁束が増えます。その漏れ磁束による局部過熱、固定子コイル端の温度上昇が運転限界を決めます。
答えは(ヌ)の固定子コイル端の温度上昇です。
進相運転限界の超過につながる系統側の負荷変動
正解 (ヲ)
曲線 be は進み力率側(不足励磁側)の限界です。系統側で容量性負荷(進相コンデンサの投入や軽負荷送電線の充電容量など)が急増すると、進み電流によって系統電圧が上昇します。AVR は端子電圧を一定に保つために界磁電流を減少させるため、発電機の運転点が進み力率側へ移り、曲線 be の限界を超えるおそれがあります。
答えは(ヲ)の容量性です。
進相運転時の限界超過を防ぐ制御機能
正解 (イ)
系統側で容量性負荷(進相コンデンサの投入や軽負荷送電線の充電容量など)が急増すると、進み電流によって系統電圧が上昇します。AVR は端子電圧を一定に保つために界磁電流を減少させるので、発電機の運転点は進み力率側へ移り、曲線 be の限界(固定子コイル端の温度上昇や安定度)を超えるおそれがあります。
この超過は短時間でも許容できない場合があるため、不足励磁制限(UEL:Under Excitation Limiter)機能で備えます。UEL は、運転点が進み側の限界に近づくと、AVR による界磁電流の減少を制限して、限界を超えないようにします。
答えは(イ)の不足励磁制限 (UEL)です。
(1)
ニ
界磁巻線温度
(2)
カ
\(\displaystyle \frac{E_{\text{f}}V_{\text{n}}}{X_{\text{d}}}\)
(3)
ヌ
固定子コイル端の温度上昇
(4)
ヲ
容量性
(5)
イ
不足励磁制限 (UEL)