電験一種 R8年 理論 問4
次の文章は,アナログーディジタル変換器(ADC)と,ADC を用いた交流用のディジタル計測器に関する記述である。文中のに当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
図は,ADC を用いた交流用のディジタル計測器で,絶縁のための変圧器(変圧比 \(1:1\))及び変流器(変流比 \(1:1\)),\(R = 1 \ [\Omega]\) のシャント抵抗,カットオフ周波数 \(f_{\text{c}} \ [\mathrm{Hz}]\) を超える周波数の信号を遮断する理想ローパスフィルタ(LPF),理想ADC,ディジタル演算回路及び表示器で構成されている。
一般に,ADCの前段にLPFを設けるが,その目的は,(1) である。そのため,\(f_{\text{c}}\) とADCのサンプリング周波数 \(f_{\text{s}} \ [\mathrm{Hz}]\) は,(2) の関係を満たす必要がある。
ここで,時刻 \(t\) における入力電圧を \(U(t) \ [\mathrm{V}]\),入力電流を \(I(t) \ [\mathrm{A}]\) とし,それらの周期を \(T \ [\mathrm{s}]\) とする。なお,入力に含まれる交流の最大周波数 \(f_{\text{max}}\) は,\(f_{\text{max}} < f_{\text{c}}\) を満たしており,ADCへの入力電圧 \(u(t)\) 及び \(i(t)\) は,\(u(t) = U(t)\),\(i(t) = R I(t)\) となる。
サンプリング周波数 \(f_{\text{s}}\) で,1周期当たり \(M\) 回(\(M > 3\))サンプルし,得られたサンプル値を順に \(u_1, u_2, u_3, \cdots, u_M\) 及び \(i_1, i_2, i_3, \cdots, i_M\) とすると,電圧実効値は,\(u(t)\) のサンプル値の二乗平均の平方根をとった値なので (3) \([\mathrm{V}]\) となる。また,平均電力は,瞬時電力の平均値であるから,(4) \([\mathrm{W}]\) となる。さらに,1周期における電力量は,(5) \([\mathrm{J}]\) で求められる。
解答群
| (イ) |
\(\displaystyle M\sum_{k=1}^{M}u_k i_k\) |
(ロ) |
量子化誤差の低減 |
(ハ) |
\(\displaystyle MT\sum_{k=1}^{M}u_k i_k\) |
| (ニ) |
\(\displaystyle \sqrt{\frac{1}{T}\sum_{k=1}^{M}{u_k}^2}\) |
(ホ)(3) |
\(\displaystyle \sqrt{\frac{1}{M}\sum_{k=1}^{M}{u_k}^2}\) |
(ヘ)(1) |
折り返し誤差の防止 |
| (ト)(4) |
\(\displaystyle \frac{1}{M}\sum_{k=1}^{M}u_k i_k\) |
(チ) |
\(\displaystyle f_\mathrm{c} > \frac{f_\mathrm{s}}{2}\) |
(リ)(5) |
\(\displaystyle \frac{T}{M}\sum_{k=1}^{M}u_k i_k\) |
| (ヌ)(2) |
\(\displaystyle f_\mathrm{c} < \frac{f_\mathrm{s}}{2}\) |
(ル) |
\(\displaystyle \frac{1}{T}\sum_{k=1}^{M}u_k i_k\) |
(ヲ) |
\(\displaystyle f_\mathrm{c} = f_\mathrm{s}\) |
| (ワ) |
\(\displaystyle T\sum_{k=1}^{M}u_k i_k\) |
(カ) |
感度の向上 |
(ヨ) |
\(\displaystyle \sqrt{M\sum_{k=1}^{M}{u_k}^2}\) |
出典:令和8年度 第一種電気主任技術者 一次試験 理論科目 問4
解説
機械に出ることもありそうな問題です。(1)と(2)は情報系の知識がある人に有利かと思います。(3)以降は知識がなくても問題文の通りに計算すれば解けます。
ADCの前段にLPFを設ける目的
正解 (ヘ)
アナログ信号をデジタル化する際、サンプリング周波数を\(f_{\text{s}} \)とすると、再現できる周波数の上限は \(\dfrac{f_{\text{s}}}{2} \)(ナイキスト周波数)となります。
元のアナログ信号に \(\dfrac{f_{\text{s}}}{2} \)を超える高周波成分が含まれていると、サンプリング後にその高周波が本来存在しない低い周波数の信号が生成されます。これがエイリアシング(折り返し雑音)です。これを防ぐため、ADCの前段にLPFを置き、\(\dfrac{f_{\text{s}}}{2} \)以上の高周波成分をあらかじめ遮断します。
これがLPFを設ける目的、すなわち折り返し誤差の防止です。よって、答えは(ヘ)の折り返し誤差の防止です。
LPFのカットオフ周波数\(f_{\text{c}}\)とサンプリング周波数\(f_{\text{s}}\)の関係
正解 (ヌ)
(1)の通り、アナログ信号をデジタル化する際、サンプリング周波数を\(f_{\text{s}} \)とすると、再現できる周波数の上限は \(\dfrac{f_{\text{s}}}{2} \)です。
LPFのカットオフ周波数\(f_{\text{c}} \)はこれ未満でなければいけないので、
$$\begin{aligned}
f_{\text{c}} &\lt \dfrac{f_{\text{s}}}{2} \\
\end{aligned}$$
を満たす必要があります。よって答えは(ヌ)の\(\displaystyle f_\mathrm{c} < \frac{f_\mathrm{s}}{2}\)です。
1周期あたりのサンプル値から求めた電圧実効値
正解 (ホ)
問題文にある通り、実効値は二乗平均の平方根です。これを満たすものを解答群から探します。なお、この問題の場合はサンプルが離散的であることに注意します。
$$\begin{aligned}
\sqrt{\frac{{u_1}^2 + {u_2}^2 + \cdots + {u_M}^2}{M}} &= \sqrt{\frac{1}{M}\sum_{k=1}^{M}{u_k}^2} \\
\end{aligned}$$
よって答えは(ホ)の\(\displaystyle \sqrt{\frac{1}{M}\sum_{k=1}^{M}{u_k}^2}\)です。
1周期あたりのサンプル値から求めた平均電力
正解 (ト)
瞬時電力は\(p(t) = u(t) i(t)\)で表され、平均電力はこれを1周期にわたって平均したものですが、これも離散値なので、サンプル数で割る必要があります。
$$\begin{aligned}
\frac{u_1 i_1 + u_2 i_2 + \cdots + u_M i_M}{M} &= \frac{1}{M}\sum_{k=1}^{M}u_k i_k \\
\end{aligned}$$
よって答えは(ト)の\(\displaystyle \frac{1}{M}\sum_{k=1}^{M}u_k i_k\)です。
1周期における電力量
正解 (リ)
(4)で平均電力を求めています。1周期における電力量は、これに周期\(T\)をかけたものになりますので
$$\begin{aligned}
\frac{T}{M}\sum_{k=1}^{M}u_k i_k \\
\end{aligned}$$
となります。答えは(リ)の\(\displaystyle \frac{T}{M}\sum_{k=1}^{M}u_k i_k\)です。
(1)
ヘ
折り返し誤差の防止
(2)
ヌ
\(\displaystyle f_\mathrm{c} < \frac{f_\mathrm{s}}{2}\)
(3)
ホ
\(\displaystyle \sqrt{\frac{1}{M}\sum_{k=1}^{M}{u_k}^2}\)
(4)
ト
\(\displaystyle \frac{1}{M}\sum_{k=1}^{M}u_k i_k\)
(5)
リ
\(\displaystyle \frac{T}{M}\sum_{k=1}^{M}u_k i_k\)