電験一種 R5年 理論 問1
次の文章は、平行平板コンデンサの電極に働く力に関する記述である。文中の(0)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
平行平板コンデンサの2枚の電極間の距離が\(x\)のとき、静電容量が\(C\)であるとする。このとき、仮想変位法を用いて、電極間の距離を\(dx\)だけ微小に広げることにより、電極に働く力\(F\)を求めることを考える。なお、\(C\), \(F\)は\(x\)の関数である。
まず、電極間の距離を\(dx\)だけ広げるためにコンデンサがした力学的仕事は、\(Fdx\)で表される。これにより、コンデンサに蓄えられた電界のエネルギー\(W_E\)が、\(dW_E\)だけ増えると考える。
ここで、次の二つの場合について考える。
(a) 定電荷の場合
2枚の電極にそれぞれ\(+Q\), \(-Q\) (\(Q>0\)) の電荷を与え、電極を電源に接続していないとする。エネルギー保存則により、\(dW_E\)と\(Fdx\)との間に\(dW_E+Fdx=0\)の関係が成り立つ。\(W_E\)を\(C\), \(Q\)で表すと(1)であるので、\(\displaystyle F=-\frac{dW_E}{dx}\)を計算すれば、力\(F\)が(2)と求められる。
(b) 定電圧の場合
2枚の電極を電圧\(V\) (\(V>0\)) の定電圧源に接続しているとする。電極間の距離を\(dx\)だけ広げることによる静電容量の変化を\(dC\)とするとき、電極に存在する電荷の大きさの変化は\(dQ=VdC\)となる。また、コンデンサから電源に流入したエネルギーは、\(dW_S=-VdQ=-V^2dC\)となる。
一方、コンデンサに蓄えられた電界のエネルギーを\(C\), \(V\)で表すと、\(\displaystyle W_E=\frac{CV^2}{2}\)であり、その変化\(dW_E\)は(3)である。
エネルギー保存則により、\(dW_E\), \(dW_S\) と \(Fdx\) との間には、\(dW_E + dW_S + Fdx = 0\) の関係が成り立つ。よって、力 \(F\) は (4) と求められる。
ここで、電極間の距離が \(x\) のときに (a) の電荷 \(Q\) と (b) の電圧 \(V\) の間に \(\displaystyle V = \frac{Q}{C}\) が成立する場合、(a) と (b) からそれぞれ求めた力 \(F\) を比較すると、(5) ことが分かる。
(イ) | \(\displaystyle \frac{V^2}{3} dC\) | (ロ) | \(\displaystyle \frac{Q^2}{C^2} \frac{dC}{dx}\) | (ハ)(1) | \(\displaystyle \frac{Q^2}{2C}\) |
(ニ) | \(\displaystyle \frac{Q^2}{C}\) | (ホ)(3) | \(\displaystyle \frac{V^2}{2} dC\) | (ヘ) | \(\displaystyle V^2 \frac{dC}{dx}\) |
(ト)(2) | \(\displaystyle \frac{Q^2}{2C^2} \frac{dC}{dx}\) | (チ) | \(\displaystyle \frac{Q^2}{3C^2} \frac{dC}{dx}\) | (リ)(4) | \(\displaystyle \frac{V^2}{2} \frac{dC}{dx}\) |
(ヌ) | \(V^2 dC\) | (ル) | \(\displaystyle \frac{V^2}{3} \frac{dC}{dx}\) | (ヲ) | \(\displaystyle \frac{Q^2}{3C}\) |
(ワ) | 定電圧源に接続されている方が強い力が働く | ||||
(カ) | 定電圧源に接続されていない方が強い力が働く | ||||
(ヨ)(5) | 定電圧源に接続されているかどうかに関わらず同じ力が働く |
出典:令和5年度第一種電気主任技術者理論科目A問題問1
解説
微分をちゃんと覚えていれば問題はないですが、実際はなかなか覚えていないんじゃないかと思います。
\(W_E\)を\(C\), \(Q\)で表す
三種二種を勉強していれば特に問題なく解けるかと思います。
\(\displaystyle W_E = \frac{Q^2}{2C}\)
です。
定電荷の場合の力\(F\)
合成関数の微分公式を使用します。
関数 \( y=f(u) \) と\( u=g(x) \)が微分可能であるとき、合成関数\( y=f(g(x)) \)の導関数は次のように表されます。
\(\displaystyle \frac{dy}{dx} = \frac{dy}{du} \cdot \frac{du}{dx}\)
問題文に\(C\)、\(F\)は\(x\)の関数とありますので、この公式を使用することができます。今回の場合ですと
\( \displaystyle \frac{dW_E}{dx}=\frac{dW_E}{dC} \cdot \frac{dC}{dx}\)
となります。これを使用して実際に\(F\)を計算しますと
\begin{aligned} F &= -\frac{dW_E}{dx}\\ &= -\frac{dW_E}{dC} \cdot \frac{dC}{dx}\\ &= -\left(-\frac{Q^2}{2C^2}\right) \cdot \frac{dC}{dx}\\ &= \frac{Q^2}{2C^2} \frac{dC}{dx}\\ \end{aligned}
となります。
定電圧のエネルギーの変化\(dW_E\)
定電圧であることから\(V\)は固定なので、\(C\)の変化による\(W_E\)の変化\(dW_E\)を求めます。
\begin{aligned} \frac{dW_E}{dC} &= \frac{d}{dC} \left( \frac{CV^2}{2} \right) \\ &= \frac{V^2}{2}\\ dW_E &= \frac{V^2}{2} dC \\ \end{aligned}
となります。
定電圧の場合の力\(F\)
問題より、
\(Fdx = -dW_E - dW_S\)
となります。\(\displaystyle dW_E =\frac{V^2}{2} dC\)、\(dW_s =-V^2 dC\)を代入すると、
\begin{aligned} Fdx &= -dW_E - dW_S \\ &= -\frac{V^2}{2} dC - (-V^2 dC) \\ &= -\frac{V^2}{2} dC + V^2 dC \\ &= \frac{V^2}{2} dC \\ \end{aligned}
よって
\(\displaystyle F = \frac{V^2}{2} \frac{dC}{dx} \)
となります。
両者の力\(F\)の比較
(2)の答えに\(\displaystyle V=\frac{Q}{C}\)を代入します。
\begin{aligned} \frac{Q^2}{2C^2} \frac{dC}{dx} &= \frac{(CV)^2}{2C^2} \frac{dC}{dx} \quad (\because V = Q/C) \\ &= \frac{V^2}{2} \frac{dC}{dx} \end{aligned}
よって、定電圧源に接続されているかどうかに関わらず同じ力が働くことが分かります。