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電験一種 R1年 理論 問4

次の文章は、半導体PINダイオードに関する記述である。文中の(0)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

 PINダイオードは、図1のように、n形半導体(n層)、真性半導体(i層)、p形半導体(p層)により構成される。半導体中のキャリヤ(電子と正孔)の拡散と再結合により、各層の境界付近には、キャリヤが存在しない空乏層が形成される。n層の不純物濃度\(N_D\)は場所によらず一定とし、全ての不純物が一価にイオン化していると仮定する。幅\(W_n\)の空乏層の左端をx座標の原点とすると、\(0 \leqq x \leqq W_n\)の領域の空間電荷密度\(\rho\)は、電気素量を\(e(>0)\)とすると、\(\rho = e N_D\)となる。幅\(W_i\)の真性半導体領域では\(\rho = 0\)と仮定し、また、p層の不純物濃度\(N_A\)は一定とすると、幅\(W_p\)の空乏層領域における空間電荷密度\(\rho\)は、\(\rho = \)(1)と表される。

 ガウスの法則の一般式は、電界ベクトル\(\boldsymbol{E} \)を用いて次式のように表される。

\(\textrm{div} \boldsymbol{E} = \dfrac{\rho}{\varepsilon} \quad \cdots \text{①} \)

ただし、\(\varepsilon\)は誘電率である。電界ベクトル\(\boldsymbol{E} \)のx軸方向成分を、座標xの関数として表した\(E(x)\)を用いて、全空間電荷領域\(0 \leqq x \leqq W_n + W_i + W_p\)の電界分布\(E(x)\)を求める。ここで、半導体の誘電率\(\varepsilon\)はn, i, p層で同一とする。①式を1次元で表した微分方程式(2)\( = \dfrac{\rho}{\varepsilon}\)を解くと、n層の空間電荷領域\(0 \leqq x \leqq W_n\)における\(E(x)\)は、\(E(x) = \)(3)と表される。ただし、両端\(x = 0\)及び\(x = W_n + W_i + W_p\)では、電界\(E(x) = 0\)と仮定し、境界\(x = W_n\)及び\(x = W_n + W_i\)では電界\(E(x)\)が連続となる条件を課すものとする。結果として、i層の領域\(W_n \leqq x \leqq W_n + W_i\)における\(E(x)\)は、\(E(x) = \)(4)と表される。全空間電荷領域における電界\(E(x)\)の概略は図2の(5)の図で示される。

 PINダイオードは、i層による高電界の緩和や、高効率な光キャリヤ生成などの特徴を活かし、高耐圧整流器や高効率な光検出器、太陽電池などに幅広く応用されている。

(イ) \(\displaystyle \frac{eN_D }{\varepsilon}W_i\) (ロ)(5) \(c\) (ハ)(3) \(\displaystyle \frac{eN_D }{\varepsilon}x\) (ニ) \(a\)
(ホ) \(-\displaystyle \frac{eN_D }{\varepsilon}x\) (ヘ)(2) \(\displaystyle \frac{dE(x)}{dx}\) (ト) \(\displaystyle \frac{eN_D}{\varepsilon} x^2\) (チ) \(\displaystyle \frac{d^2E(x)}{dx^2}\)
(リ)(1) \(-eN_A\) (ヌ) \(-e\sqrt{N_A N_D}\) (ル)(4) \(\displaystyle \frac{eN_D }{\varepsilon}W_n\) (ヲ) \(b\)
(ワ) \(-\displaystyle \frac{dE(x)}{dx}\) (カ) \(eN_A\) (ヨ) \(-\displaystyle \frac{eN_D W_n}{\varepsilon}\)

出典:令和1年度第一種電気主任技術者理論科目A問題問4

解説

電験一種受験者でもこれをちゃんと理解している人は少ないと思います。ただ、解くだけであれば読解で解けます。

空乏層領域における空間電荷密度\(\rho\)

(リ)の\(-eN_A\)か(カ)の\(eN_A\)が選択になるかと思います。(ヌ)の\(-e\sqrt{N_A N_D}\)は誤答用の選択肢だと思いますがこれを選ぶ人はあまりいないでしょう。

n層の方の空乏層には固定された正の電荷が、p層の方の空乏層には固定された負の電荷がありますので、符号にマイナスがつき答えは(リ)の\(-eN_A\)となります。

※ここらへん詳しくないのであまり参考にしないでください。

①式を1次元で表した微分方程式

\( \text{div} \mathbf{E} = \dfrac{\partial E_x}{\partial x} + \dfrac{\partial E_y}{\partial y} + \dfrac{\partial E_z}{\partial z} \)なので、この時点で選択肢は(ヘ)の\(\displaystyle \frac{dE(x)}{dx}\)に絞られます。

問題に「電界ベクトル\(\boldsymbol{E} \)のx軸方向成分を、座標xの関数として表した\(E(x)\)」とあることから、\(E(x)\)は\(x\)のみの関数であるため\(\displaystyle \frac{dE(x)}{dx}\)と表現していると思われます。

n層の空間電荷領域\(0 \leqq x \leqq W_n\)における\(E(x)\)

微分方程式を解きます。

\begin{aligned} \frac{dE(x)}{dx} &= \frac{\rho}{\varepsilon} \\ \int dE(x) &= \int \frac{\rho}{\varepsilon} dx \\ E(x) &= \frac{\rho}{\varepsilon} x + C \quad \text{(Cは積分定数)} \\ \end{aligned}

題意より、\(x=0\)のとき、\(E(x)=0\)なので

\begin{aligned} E(x) &= \frac{\rho}{\varepsilon} x + C \\ &= \frac{\rho}{\varepsilon} x \\ &= \frac{eN_D }{\varepsilon}x \\ \end{aligned}

よって答えは(ハ)の\(\displaystyle \frac{eN_D }{\varepsilon}x\)です。

i層の領域\(W_n \leqq x \leqq W_n + W_i\)における\(E(x)\)

問題文に「境界\(x = W_n\)及び\(x = W_n + W_i\)では電界\(E(x)\)が連続となる条件を課す」とあります。

また、「幅\(W_i\)の真性半導体領域では\(\rho = 0\)と仮定」ともあります。

これらより、真性半導体領域では電界は変化せず、\(x = W_n\)の時のn層の電界と同じになることが分かります。

よって、答えは(ル)となり、\(\displaystyle E(x) = \frac{eN_D }{\varepsilon}W_n\)です。

全空間電荷領域における電界\(E(x)\)の概略

(4)の通り、i層の領域では\(\displaystyle E(x) = \frac{eN_D }{\varepsilon}W_n\)です。

また、\(x =W_n + W_i + W_p\)の時は電界\(E(x)=0\)です。

幅\(W_p\)の空乏層領域における空間電荷密度\(\rho\)は、\(\rho = -eN_A\)なので、電界は\(x =W_n + W_i\)以降は右肩下がりになります。

これらを表現している図は\(c\)なので、答えは(ロ)となります。

  • (1)リ \(-eN_A\)
  • (2)ヘ \(\displaystyle \frac{dE(x)}{dx}\)
  • (3)ハ \(\displaystyle \frac{eN_D }{\varepsilon}x\)
  • (4)ル \(\displaystyle \frac{eN_D }{\varepsilon}W_n\)
  • (5)ロ \(c\)