電験一種 R7年 法規 問6
次の文章は、電圧フリッカに関する記述である。文中の(0)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
a) 製鉄用アーク炉などの負荷を、(1)の小さい系統に接続した場合、無効電力の変動により母線電圧が連続的に短い周期で不規則に変動する。これを電圧フリッカと呼ぶ。この場合、同じ変電所から供給される一般需要家の電灯、蛍光灯などの照明、テレビにちらつきを生じ、見ている人に不快感を与える場合がある。
電圧フリッカは、電気溶接機、電動機の(2)電流によっても発生するが、アーク炉によるものが著しい。
電圧フリッカの防止には、次のような対策がある。
① (1)の大きい系統から供給する。又は、一段電圧階級の高い系統から供給する。
② 一般負荷と分離するため、(3)の変圧器又は(3)の送電線で供給する。
③ アーク炉の電流変動を抑制するため、(4)又は可飽和リアクトルを挿入する。
④ 静止型無効電力補償装置を設置し、アーク炉の無効電力変動分を吸収する。
b) 近年の太陽光発電などの分散型電源の大量連系に伴い、春季・秋季やゴールデンウィーク・年末年始など電力需要が少ないときに、晴天で太陽光発電設備の出力が増加すると、その分需給バランス上(5)発電機の多くを停止せざるを得なくなっている。このため、短絡インピーダンスが(6)なり、わずかな無効電力の変動でも系統電圧が大きく変動する。
太陽光発電設備は、逆潮流有りで連系するには、保安確保や事故被害拡大防止のため(7)防止機能を設ける必要がある。この場合、低圧配電線に連系する太陽光発電設備を転送遮断方式で制御するには制御対象数が多過ぎて現実的に困難であり、周波数変化率等の検出による受動的方式と、周波数変動等を与えたときの応動を検出する能動的方式を組み合わせている。
最近では、無効電力を注入したときの応動を検出する新型能動的方式の太陽光発電設備が大量に系統連系され、系統への無効電力の注入量が増加して、電圧変動を助長することとなり、電力系統と分散型電源間の無効電力の発振による電圧フリッカの発生が顕在化してきている。
このため、周波数フィードバック制御の(8)の下げ設定や無効電力発振抑制機能を具備したパワーコンディショナ (PCS) の使用などの対策がとられている。
(イ)(1) | 短絡容量 | (ロ) | 脱調 | (ハ)(4) | 直列リアクトル |
(ニ) | 定常 | (ホ) | 周波数特性定数 | (ヘ)(8) | ゲイン |
(ト) | 事故波及 | (チ) | 誘導 | (リ)(3) | 専用 |
(ヌ) | 励磁 | (ル) | 検出レベル | (ヲ) | 共用 |
(ワ) | 風力 | (カ)(5) | 同期 | (ヨ) | 分路リアクトル |
(タ) | 充電容量 | (レ)(7) | 単独運転 | (ソ) | 小さく |
(ツ)(6) | 大きく | (ネ)(2) | 始動 |
出典:令和7年度第一種電気主任技術者法規科目B問題問6
解説
たまにある電力の問題として出てきてもおかしくない法規の問題です。二次試験でも問われることがあるので、しっかり理解したいところです。
電圧フリッカの起こる系統
電圧フリッカは短絡容量の小さい系統で起こります。
短絡容量は系統インピーダンスが大きいほど小さくなります。インピーダンスが大きいということは電流の変化による電圧変動が大きいということです。製鉄用アーク炉のように変動が大きい負荷の時これは顕著になります。
電圧フリッカの起こる電流
電動機は始動電流が大きいため電圧フリッカの原因になります。
電圧フリッカの防止法
①短絡容量の大きい系統から供給する。又は、一段電圧階級の高い系統から供給する。
②一般負荷と分離するため、専用の変圧器又は専用の送電線で供給する。
③アーク炉の電流変動を抑制するため、直列リアクトル又は可飽和リアクトルを挿入する。
④静止型無効電力補償装置を設置し、アーク炉の無効電力変動分を吸収する。
需給バランス上停止する発電機
太陽光発電の発電量が増加すると他の発電機の出力を低下させる必要がありますが、発電所で使われている発電機は多くが同期発電機なので、答えは同期発電機です。
短絡インピーダンスはどうなるか
わずかな無効電力の変動でも系統電圧が大きく変動するとあることから短絡容量は小さくなることが分かります。短絡容量が小さくなるということは短絡インピーダンスは大きくなります。
こちらが参考になります。変動性再エネ大量導入が運用容量等に与える影響について
太陽光発電設備はが逆潮流有りで連系する場合に設ける機能
逆潮流有りの場合、系統からの給電が停止したにもかかわらず、分散型電源が発電を継続してしまう単独運転を防止する機能が必要です。
周波数フィードバック制御の設定
ゲインが高いとPCSが周波数変動に対して過剰に反応し、注入される無効電力量が大きくなり電圧フリッカの原因となります。